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概要

 私立医学部に通うに当たって、奨学金のサポートを考えている人も多いと思う。どの程度の額を借りることができるのか、返済はどのようなペースでしていくのかを記載していく。

日本学生支援機構

 最も有名な奨学金であり、教育の機会均等を事業目的として運営されている。平成25年時点で、貸与人数は144万人であり、10年間で1.7倍となっている。大学生では約2.6人に1人、大学院生では約2.5人に1人、専修学校専門課程の生徒では約2.7人に1人が機構奨学生である。私立医学部にも、日本学生支援機構の奨学生は少なからず存在する。
第一種と第二種があり、第一種は無利子で少額を、第二種は有利子でより大きな額を貸与されることとなる。

採用基準

医学部に進学できる学生ならば、学業の条件は満たすであろう。

第一種

  • 高校在籍時の評定平均が3.5以上
  • 目安の所得として、世帯人数5人の場合、給与所得が922万円以下。4人の場合は747万円以下。

第二種

  • 学業成績が平均以上
  • 目安の所得として、世帯人数5人の場合、給与所得が1300万円以下。4人の場合は1100万円以下。

貸与金額(月額)

第一種

自宅自宅外
国公立30,000円or45,000円30,000円or51,000円
私立30,000円or54,000円30,000円or64,000円

第二種

月額30,000円or50,000円or80,000円or100,000円or120,000円
であり、私立医学部ならば160,000円の貸与も可能である。

金額まとめ

第一種と第二種を最大まで借りることで、月額224,000円を貸与してもらうことが可能である。私は実際にこの最大額を借り、最終年度に入る前に第二種を中止とした。6年間最大額を借りると、1600万円程度になる。

返済

 デフォルトの支払い回数は240回である。つまり、20年で返済することになる。これは、卒後半年目の9月から支払いを開始することとなる。私の場合は、第一種を18,000円/月、第二種を45,000円/月で支払っている。これだけの額を借りても、金額としても無理なく返せる範囲である。ただし、第二種の場合は利息が発生するため、早い段階で先払いをした方が、利子分を減らすことができる。この利息というのは、年間何%かが金額に上乗せされていくものである。奨学金申し込み時に、利率固定方式か利率見直し方式かを選択することとなるが、私の場合は利率固定方式を選んでいたようで、年利1.13%で計算されることとなっている。年利1.13%で1000万円を240回払いで返済した場合、総支払額は1128万円となる。しかし、最初に300万円を一括で支払い、その後700万円を分割して支払うこととすると利子は56万円程度となり、およそ70万円程度の利子が浮いたこととなる。当然早ければ早いほど利子のかかる金額が減って得することとなる。そのために、繰り上げ返済のシステムがあり、パーソナルページにて申請が可能である。

地域枠

  • 都道府県が運営する所謂「紐付き奨学金」であり、学費の一部または全額を自治体等から貸与され、一定期間の指定勤務先・診療科での勤務を条件に返還が免除される。実質的には条件付きの給付型奨学金である。
  • 一部の枠では当該都道府県内の高校への通学実績や居住実績を募集要件としている場合があり注意が必要。
  • デメリットとしては卒後約10年という大事な時期に拘束を受け、将来の選択肢を大きく狭められてしまう。
    • キャリア形成に関しては、専門医取得等それなりの配慮は得られるが、私生活面では、結婚や子育て等を考えると拘束期間が終わった後もその地域に定住することになる可能性もあるという覚悟は必要。
    • 貸与金を返還して地域枠を離脱する事例が多発したこともあり、今後地域枠からの離脱が難しくなっていくことも予想される。地域枠の離脱には相応のやむを得ない事由と都道府県の承認が必要であり、承認が得られなければ県外での初期研修や専門医取得は実質的に不可能である。
    • 出願にはライフプランを制限されてでも自分は医師になりたいという強い覚悟と信念が必要である。

各大学に貸与枠が設置されている制度

「地域枠選抜」として入試時に選抜される方式

 最も一般的な形態。貸与額は月額10万円程度の貸与から自治体全額負担となるものまで様々。入学時から採用が確約されており、受験生からすると心強い。多くの大学では地域枠の定員は少ないが、枠が少なく卒後の縛りのある地域枠を敢えて受験する層は限られており、難易度自体は一般枠と大差ない場合が多い。臆することなくチャレンジすることが重要だろう。
 例外的に東北医科薬科大学A・B方式では同様の制度による修学資金枠が定員の半数以上に設定されており、経済的に他の私立医学部の受験が難しい国公立医学部受験者の滑り止めとして人気を集めている。

入学後に選考が行われる方式

 大学によっては一般枠入学者が入学後に大学を通して応募する方式のものが設置されている。貸与額や返済免除の条件等は入試時に選抜されるものと同様である。ただし、これらは入学時には採用が確約されていないため、はじめからこれらをあてに受験することは出来ない。

所属大学に関係なく貸与可能な制度

 全国どこの大学へ行っても利用可能。都道府県自体が窓口となっており、受験生個人で応募、選考、貸与を受ける。返還免除要件等は大学が窓口の地域枠と同様。情報が出回りづらいので、各都道府県の該当HPを要チェック。

その他の修学資金貸与制度

 都道府県の地域枠以外にも、個人が直接支援主体に応募し利用出来る紐付き奨学金制度が多数存在する。主体は過疎地の市町村や病院等による地域枠とほぼ同じ形態のものの他、矯正医官修学資金貸与制度や、徳洲会グループや民医連等の民間団体など様々である。いずれも返済免除の条件として指定勤務先での勤務を義務づけるものである。

 いずれの奨学金も応募条件や貸与金額等非常に多様であるため、各奨学金の詳細についてはそれぞれのHPを参照されたい。

徳洲会グループ

貸与額:月額15万円、利息年2%
返還免除要件:初期研修を徳洲会グループで行い、初期研修修了後は貸付期間の3分の2の期間、徳洲会グループの病院で勤務する事。また、そのうちさらに4分の1の期間以上を徳洲会グループの指定する病院(主に僻地病院)で勤務する事。

 国内の広い地域で病院や介護施設を運営する民間医療グループの一つ。
 徳洲会グループの病院は、起源である南西諸島地域のほか首都圏など都市部も含む全国の広い範囲に設置されている。初期研修病院選びはマッチング制度に参加する形で、出願病院を徳洲会系列のみに制限されることになる。徳洲会系列には奨学生以外からも人気のある大都市近郊の基幹病院も存在し、一定の選択肢の幅はある。その後専門研修終了まで、一定期間の僻地勤務を挟みながら働くことになる。一般に徳洲会は勤務内容がハードな病院が多いことで知られており、その点については把握しておく必要がある。

民医連

貸与額:月額10万円前後
    (都道府県により異なる)
返還免除要件:卒後一定期間の各都道府県内の民医連加盟病院での勤務(都道府県により異なる)

 正式名称は全日本民主医療機関連合会。各都道府県に地方組織があり、そこに様々な医療・福祉施設が加盟し構成される社会運動団体である。
 民医連は日本共産党の主導で設立され、事実上の共産党の下部組織でもある。なかには共産党の政治活動との関わりや、院内での共産党色がかなり濃い病院も多く存在する。共産党員になる必要は全くないが、気になる人は、奨学金を借りる前にその都道府県内の民医連加盟病院を実際に見ておくのも良いかもしれない。
 奨学金制度は各都道府県の地方組織が独自に運営しており、貸与額や返済免除などの規定も都道府県ごとにやや異なる。初期研修病院選びはマッチング制度に参加する形で、奨学金を借りた地方組織の加盟病院を受験することになる。都道府県によっては加盟病院が少ないこともあり注意が必要。また、定期開催される、医療や社会問題を学ぶ奨学生の集会にも参加を求められることもある。詳細は民医連のホームページで確認されたい。

コメント

最新の20件を表示しています。 コメントページを参照

  • あ -- [85cb1c42] 2018-12-03 (月) 16:36:35
  • あ -- [31615ca9] 2019-01-21 (月) 22:27:16
  • あ -- [7eff31aa] 2020-07-15 (水) 10:10:50
  • 一口に地域枠と言っても、大阪府や愛知県なんかは、本当の過疎地は自治医大が担当で、その他の大学の地域枠はそんなに過疎地域じゃないよね。 -- [72a804ce] 2021-09-03 (金) 19:41:54
    • ? -- [856af01e] 2021-09-04 (土) 00:16:09
  • 徳洲会とか民医連の奨学金借りてる人っている? -- [85af15df] 2022-08-12 (金) 19:06:09
  • 徳洲会は多くはないけど学年に最低1人2人はいるイメージかなあ。民医連も少ないけどちょいちょいいる。 -- [014bc450] 2022-11-22 (火) 19:53:42
  • あ -- [99f24088] 2024-01-14 (日) 23:11:37
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